新潟市西区
米粉シフォンケーキ店 2539kitchen
中村 剛(右)/中村 かおり(左)
新潟市西区で、身体にやさしいシフォンケーキを中心に提供している「米粉シフォンケーキ店 2539kitchen(ニコサクキッチン)」。奥様が腸の難病を患ったことをきっかけに、「同じような病を抱えている方や、アレルギー体質の方、小さなお子様でも安心して食べられるおやつを届けたい」という想いから、2021年にオープンしました。今回は、食材選びへのこだわりや日々大切にしていること、そしてお菓子作りに込められた想いについて伺いました。
健康志向でも美味しい、新潟発の米粉スイーツ
お菓子づくりに興味を持ったきっかけを教えてください。
もともとは料理人として長年飲食店に勤めていたのですが、新型コロナウイルス感染症の流行によって仕事が大きく減り、思いがけず時間が空いてしまったんです。せっかくできた時間をどう過ごそうかと考えていたときに、妻が自分の体のために一生懸命おやつを作っている姿を目にして、「自分も挑戦してみようかな」と思ったのが始まりでした。
妻は腸の難病を患っており、小麦粉を口にすることができません。同じように、小麦を避けている方や、アレルギーで悩んでいる方は少なくないのではないか。そう感じたことが、米粉を使った“身体にやさしいおやつづくり”を始める大きなきっかけになりました。料理をすること自体は昔から大好きでしたので、自然と夢中になっていきましたね。
「2539kitchen」を始めるときの想いや状況を教えてください。
料理人として働いていた頃から、「いつかは自分のお店を持ちたい」という気持ちはずっと心の中にありました。ただ、ありきたりなお店をつくっても意味がない。どうすれば他にはない個性や面白さを出せるのか、ずっと模索していたんです。
そんな中で訪れたのがコロナ禍でした。働き方や食のあり方が大きく変化する中で、行きついたのが“米粉を使った商品をメインに扱う”という方向性でした。
当時から健康志向の方は少しずつ増えてきていましたが、どうしても「健康的なお菓子=美味しくない・質素」というイメージが根強くありました。もちろん妻の病気をきっかけに、安心して食べられるおやつをつくりたいという気持ちは一番にありましたが、それに加えて“健康志向でもしっかり美味しい”ものを届けられたら楽しいだろうな、という思いが強くありました。
2021年12月、まだコロナ禍の影響が続いている時期ではありましたが、「おやつを楽しみたくても楽しめない人に、美味しいおやつを届けたい」という気持ちが背中を押し、思い切ってお店をオープンする決意を固めました。
1%の水分にこだわる、至福のしっとり感
日々のお菓子づくりの中で特に大切にしていることは何ですか。
店名の由来にもあるように、私たちが一番大切にしているのは“小麦粉の代わりに米粉を使うこと”です。使用する米粉もただの米粉ではなく、新潟県産のものを選んでいます。米どころ新潟の素材を活かしたお菓子にすることで、安心感と美味しさの両方を届けられると考えています。
さらに、調味料や副材料にもこだわっています。有機栽培のものや地元・新潟県産のものを中心に、人からの紹介や自分で調べた情報をもとに、その時々でベストと思える素材を集めて使っています。ベーキングパウダーや保存料、白砂糖は使用せず、できる限り自然なかたちで仕上げることも大切にしています。
野菜は、自然栽培の農家さんを回って集めた野菜をお店や個人へ販売して頂いてる『つなぐ便』というサービスを利用し、定期的に届けてもらっています。朝に採れた新鮮な野菜がその日のうちに届くので、どれも本当に美味しいんです。せっかく近くで、身体にやさしくて美味しい食材が育てられているのだから、それをお菓子に活かさない手はありませんよね。
「2539kitchenらしさ」はどこにあると思いますか。
やはり一番の特徴は、圧倒的なしっとり感のあるシフォンケーキだと思います。小麦粉を使わないとどうしても生地がパサつきやすくなるのですが、それを解消するために米粉を選んだことはもちろん、ライスミルクやこめ油なども厳選し、水分量を細かく調整しながら試作を重ねてきました。
特にこだわっているのは、1%単位で水分量を変え、温度も 1 度単位で調整している専用のオーブン。まさに職人の相棒のような存在で、何度もトライアンドエラーを繰り返しながら、今の“しっとり感”にたどり着きました。
ありがたいことに、「ここのシフォンケーキを食べたら、他では満足できない」と言ってくださるお客様もいます。その言葉をいただけるのは本当に嬉しいですし、大きな励みになっています。これからも現状に満足することなく、さらに美味しさを追求し、“2539kitchenらしさ”を磨き続けていきたいと思っています。
みんなが同じおやつを楽しめる未来へ
フードロス削減に向けた取り組みや工夫を教えてください。
できるだけ無駄を出さないように、時期や季節、さらにはその日の雰囲気まで細かく読み取って、作る量を調整しています。それでも、どうしても読みが外れて余ってしまったり、逆に足りなくなってしまったりすることはあります。だからこそ、日々の調整だけではなく、他の工夫も欠かせないと感じています。
余ってしまった場合は、店頭で値引き販売を行ったり、ベーグルは冷凍販売に回したりして、できる限りロスにならないようにしています。それでも残ってしまうときには自宅に持ち帰りますが、家族は「美味しい!」とむしろ喜んで食べてくれるので、無駄にはならないんです(笑)。
また、私たちは必要以上に大量生産をしていないので、『たくさん買いたい!』という方は事前にご予約いただければ、必要な数をご用意することも可能です。電話はないのですが、InstagramのDMや公式LINEからお気軽にご連絡いただければと思います。
これから挑戦したいことはありますか?
今後は、より幅広いアレルギーに対応したおやつ作りに挑戦していきたいと考えています。現在小麦粉は使っていませんが、卵などは使用しています。将来的には、アレルギー体質の方や小さなお子様を含め、“みんなで同じおやつを安心して楽しめる”ようなお菓子を提供できるようにしたいですね。
また、最近はランチメニューにも力を入れ始めています。ベーグルはプレーンやチョコ、クリームチーズのほか、店内で乾燥させた自家製ドライトマトを使ったものなどをラインナップ。そこにサラダやおかずを組み合わせ、お客様の声を伺いながら少しずつブラッシュアップしているところです。
さらに2階にはイートインスペースも設けています。友人同士で集まったり、ご家族で過ごしたりと、みんなでワイワイ楽しめる笑顔あふれる場所に育てていきたいと思っています。
新潟の米粉といえば2539kitchenへ
「2539kitchen」を通じて、実現したい想いはありますか?
将来的には、“日本のグルテンフリーといえば2539kitchen”と真っ先に思い出していただけるような存在になりたいです。店頭販売に加えて、これまでも地域のイベントやマルシェに参加させていただいていますが、そうした場で『今回はどんな新作があるかな?』とワクワクしながら足を運んでもらえるようなお店でありたいと思っています。
そのために、定番の商品を磨き続けるだけでなく、常に新しいフレーバーやアイデアに挑戦していきたいです。米粉や野菜、果物など新潟ならではの食材を活かし、これまでにない組み合わせに挑戦することで、驚きと発見のあるおやつを届けていけたらと考えています。
そしてもう一つ大切にしているのは、“誰もがおやつを楽しめる場所”であることです。アレルギーの有無や年齢に関係なく、安心して口にできて、美味しさを共有できる。そんな空間や商品を通じて、笑顔が広がっていく未来を描いています。
「2539kitchenに行けば、きっと自分にぴったりのおやつが見つかる」。そんなふうに思っていただける存在になれるよう、これからも挑戦と工夫を続けていきたいですね。
本記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
小麦粉が合わなくて困っている方はもちろん、『ちょっと気になるな』『どんな味なんだろう』と興味を持ってくださった方も、ぜひ一度お店に足を運んでみてください。私たちがこだわり抜いて作ったシフォンケーキやベーグルを味わっていただけたら嬉しいです。
店内ではコーヒーや自家製ドリンクなど、ドリンクメニューも豊富にご用意しています。ランチとして、あるいはおやつの時間に、ぜひゆっくり楽しんでいただければと思います。
営業時間は10:00から、ランチは11:00からスタートしています。テイクアウトも可能ですので、ご自宅や職場で楽しむのもおすすめです。お散歩の途中に、友人やご家族とのお出かけに、どうぞ気軽に遊びにいらしてください。皆さまにお会いできるのを楽しみにお待ちしています。
●詳細情報
名称:米粉シフォンケーキ 2539kitchen
住所:新潟県新潟市西区内野552
営業時間:10:00〜18:30
Instagram:https://www.instagram.com/2539kitchen/?hl=ja
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https://www.instagram.com/finear_press/?hl=ja
取材にご協力いただきありがとうございました!
finearではこれからも、「つくり手の想いでつなぐ、新潟の未来」をテーマに、生産者の想いを発信していきます!
取材撮影 by BOOT