「つくり手の想い」Vol.3  ― 受け継いだ酒蔵から届ける、地元に根ざした一杯 ―

新潟市北区
DHC酒造 製造管理品質保証部
製造責任者 係長 村木 章郎

世界的にも高い人気を誇る新潟の日本酒。その美味しさを支えているのは、酒蔵の中で日々真摯に酒と向き合う、“つくり手”たちの丁寧で誠実な手仕事です。今回は、DHC酒造の製造責任者・生産部係長の村木章郎さんに、酒づくりへのこだわりや素材に込める想いについて伺いました。

伝統を継ぎ、ご縁から始まる新たな挑戦

DHC酒造とはどんな酒蔵ですか?

DHC酒造は、新潟市北区(旧豊栄市)の地で、100年以上にわたり日本酒を造り続けてきた酒蔵です。2014年にDHCグループの一員となり、現在の「DHC酒造」として新たな歩みを始めました。

明治41年創業時から大切にしてきた品質重視の方針を受け継ぎ、食の安全性を保証する制度として知られる「コーシャ」認証も取得。旧来から親しまれてきた銘柄である「朝日晴」「越乃梅里」「嘉山」はそのまま継承しつつ、DHC酒造としては「悠天(ゆうてん)」という新たな銘柄も展開しています。それぞれの銘柄で、お客様の嗜好やシーンに合わせた多彩なシリーズを展開しているのが特長です。

※コーシャ認証:ユダヤ教の食事規定に則り、原料・設備・製造工程などが適正であると認められた食品に与えられる国際的な認証制度。

DHC酒造ならではの仕込み方法や大切にしている工程を教えてください。

当蔵の最大の特長は、全量を瓶で貯蔵する「全量瓶貯蔵」を採用している点です。多くの蔵元では、発酵を終えた酒を大型タンクで貯蔵するのが一般的ですが、DHC酒造では高級酒で用いられることが多い瓶貯蔵を、すべての製品に採用しています。瓶ごとに品質を保ちやすく、光や酸素の影響を最小限に抑えられるため、風味や香りを損なわずに長期間安定させることができます。

さらに、酒は低温で搾ることを徹底。搾った直後にすぐ瓶詰めを行い、そのまま「氷温熟成」に移します。氷温とは0℃前後の温度帯を指し、酒の熟成をゆるやかに進めながら、フレッシュな香味も保つことが可能です。

これらの工程を経ることで、季節を問わず、年間を通じて安定した品質と味わいをお届けできるのが、DHC酒造ならではの強みです。お客様がいつ手に取っても、変わらぬおいしさを楽しんでいただけるよう、一つひとつの工程に細心の注意を払っています。

新潟の大地と清流が育んだ味わい

新潟で酒づくりを行ううえで感じる魅力を教えてください。

新潟の酒づくりには、4つの魅力があると感じています。

1つ目は冬の雪がもたらす自然の恵みです。雪は空気を清浄にし、気温を低く安定させることで、酒造りに適した環境を整えてくれます。
2つ目は豊富な水。新潟の水はミネラル分が少ない軟水で、これが淡麗で澄んだ味わいの日本酒を生み出します。
3つ目はお米。全国一の収穫量を誇る米どころであり、酒米の品質も高く、酒の味わいを支える重要な要素です。
そして4つ目が技術の継承。全国の酒づくりを支えてきた越後杜氏をはじめ、長年の研究による高度な醸造技術が息づいています。県立の酒造研究機関「新潟県酒造試験場」や、若手技能者を育成する「新潟清酒学校」など、官民一体で技術の継承と向上に努めているのも新潟ならではです。

こうした恵まれた環境のもと、DHC酒造では県内の農家と連携し、「五百万石」や「越淡麗」といった酒米を使用しています。中でも「越淡麗」は、地元豊栄の契約農家から仕入れており、「嘉山」という銘柄には、この越淡麗を100%使用しています。銘柄名の「嘉山」は、DHC酒造が位置する地名に由来しており、まさに“地元米100%”の地産地消モデルとして展開している商品です。

豊栄をはじめとした新潟の土地で育まれた米を使い、地域の魅力がぎゅっと詰まった一本を、地元の皆さんにもぜひ味わっていただきたいと考えています。

お酒づくりの過程で出る「活用しきれない素材」はありますか?

お酒づくりの副産物の中でも、特に大きな課題となっているのが「酒かす」の利活用です。現在、酒かすの多くは食品加工用として卸していますが、その利用量は年々減少傾向にあります。酒かすは発酵食品であり、米や米麹の栄養に加え、発酵過程で生まれる有用成分を豊富に含んでいます。健康や美容にも良いとされる、非常に価値の高い食材です。

また、酒かすはご家庭でも手軽に活用できる素材で、漬け床や甘酒、粕汁、お菓子づくりなど、幅広い用途があります。ご興味のある方は、ぜひ酒蔵の直売所で手に取っていただき、その味わいや魅力を日々の食卓で楽しんでいただけたら嬉しく思います。

酒づくりで知った感動を、多くの人へ

ご自身が手掛けたお酒を、どのように飲んでほしいですか?

DHC酒造では、甘口から辛口まで幅広いお酒を取りそろえています。まだDHC酒造のお酒を飲んだことがないという方には、ぜひ一度試飲していただきたいです。新潟県内であれば、「新潟ふるさと村」や「ぽんしゅ館」、「嘉山亭」などでお試しいただけます。特にぽんしゅ館では、県内のさまざまな酒蔵のお酒と飲み比べができるので、DHC酒造の味わいを知っていただくにはぴったりの場所だと思います。

当蔵のお酒は、香りの高さが大きな特長です。吟醸香やフルーティーな香りが楽しめる「越乃梅里 純米吟醸」は、2021年・2022年と2年連続で「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」の最高金賞を受賞しています。香りの華やかさや飲みやすさから、女性や若い世代、日本酒初心者の方にもおすすめできる一本です。

どのお酒を選べばよいか迷われた際は、ぜひ気軽にスタッフへお声がけください。皆さまの好みに合った一杯をご案内します。

つくり手として伝えたいメッセージをお願いします。

実は私自身、もともとはお酒が飲めなかったんです。ですが、酒づくりに携わる中で、職人たちの手仕事やそこに込められた想いに触れ、お酒の本当のおいしさを知るようになりました。

つくり手として伝えたいのは、日本酒の魅力をもっと多くの方に知っていただきたい、という想いです。新潟には誇るべき酒文化があります。その素晴らしさをより多くの方へ届けるために、私たちはこれからも挑戦を続けていきます。日本酒を通して、新潟の魅力や奥深さを感じていただけたら嬉しいです。

●詳細情報
名称:株式会社DHC酒造
住所:新潟県新潟市北区嘉山1丁目6-1
HP:https://www.bairi.net/
Instagram:https://www.instagram.com/dhc_shuzou/

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https://www.instagram.com/finear_press/?hl=ja

取材にご協力いただきありがとうございました!
finearではこれからも、「つくり手に想いでつなぐ、新潟の未来」をテーマに、生産者の想いを発信していきます!

取材撮影 by BOOT