新潟市東区
株式会社スリーエコ
代表取締役 東 潤さん
2019年に、フードイベントの企画・制作・運営を手がける「株式会社ライブポート」を立ち上げた東 潤(ひがし じゅん)さん。イベントを通じて新潟の食の魅力を発信する一方で、2024年には食品ロス削減に取り組むリユース型食品ショップ「ecoeat泰平橋店」をオープンしました。生産者と消費者の間に立つ“つなぎ手”として、なぜ今この取り組みを始めたのか。その背景にある想いや、これから描くビジョンについて、お話を伺いました。
「もったいない」から始まった、もうひとつの挑戦

これまでの歩みや、「ecoeat泰平橋店」を始めたきっかけを教えてください。
もともとは、「クラフトビールの陣」や「カレーは飲み物の陣」、「にいがた米の陣」など、新潟県内でフードイベントの企画・制作・運営を行っていました。そうしたイベントを続けるなかで目の当たりにしたのが、余った食品が大量に廃棄されてしまう現実です。
「フードイベントを開催しても、結果的に自分たちの活動が食品ロスを生んでいるとしたら、それは新潟のためにならないのではないか」と感じるようになりました。
ちょうどその頃、日頃からお世話になっている新潟の社長より、大阪で始まったecoeatを「新潟でもやってみないか?」と声をかけてもらったんです。実際に大阪の店舗を見に行ってみると、そこには“まだ美味しく食べられるのに、通常の流通には乗らない”食品が800品以上並んでいて、衝撃を受けました。
フードイベントの現場で感じていた課題と、目の前にあった食品ロスの実態がリンクして、「これは自分の手で取り組むべき課題だ」と、ecoeatの開業を決意しました。
食品ロス削減に取り組む中で、特に強く感じている社会課題は何ですか?
ecoeatを始めてから特に強く感じているのは、「食品ロス」と「貧困」が同時に存在しているという、社会のいびつさです。今この瞬間にも、どこかでまだ食べられる食品が捨てられている一方で、すぐ近くには食べ物に困っている人たちがいる。その事実に、強い違和感を覚えました。
この課題に向き合うために、私たちはecoeatの運営を通じて、フードバンクや子ども食堂への継続的な支援の必要性を強く感じています。ecoeatには一般家庭から支援を求める相談も届いており、新潟県内だけでも毎月数件のご相談があり、物品の直接支援も行っています。
私たちは、こうした支援を“続けていくこと”こそが重要だと考えます。
社会貢献活動は、補助金頼みの単発的な取り組みになりがちですが、生活に困っている方々を支えるには、時間と継続性が欠かせません。そこでecoeatでは、寄付ではなく“販売”という形をとることで、売上の一部を支援に回し、仕組みとして持続可能な支援を実現しています。
買える人たちに、お得な価格で商品を購入してもらうことで、直接的には食品ロスの削減に、間接的には生活困窮者への支援につながる。そんな循環を、ecoeatは目指しています。
受け入れることでつながる、次の価値

どのような基準で商品を仕入れているか教えてください。
食品は、どのように管理されてきたかによって品質が大きく変わります。管理状態が良ければ、たとえ賞味期限が切れていても、安全に食べられるものが多くあります。そのため、ecoeatでは、適切な管理体制を整えている事業者様に絞って商品を仕入れています。
ありがたいことに、事業者様のほうから「この商品、買い取れますか?」とご相談いただくことも多いのですが、その都度、管理体制を一社一社丁寧に確認し、ecoeatの取り組みや理念をしっかりご説明したうえで、ご理解・ご賛同いただける事業者様からのみ、商品を仕入れています。
ただ“賞味期限が過ぎた”という理由だけで見過ごされることのないように、賞味期限と消費期限の正しい知識と、食品が本来持つ価値をきちんと伝えていきたいと考えています。
仕入れる商品に制限はありますか?
事業者様からのSOSには、できる限りお応えしたいと考えています。私たちが受け取らなければ、その商品がそのまま廃棄されてしまう可能性があるため、まずは「どうすれば仕入れられるか」を前提に、受け入れの可能性を探るようにしています。
実際、ここ数年で事業系食品ロスへの意識は高まり、多くの事業者様が自助努力で削減に取り組まれています。とはいえ、季節商品の売れ残りや在庫の偏りなど、構造的にロスが発生してしまう場面はどうしてもあります。中には大量になるケースもありますが、そうした場合は全国に広がるecoeatのネットワークとも連携し、ご相談いただいた量をできるだけ受け入れられるよう体制を整えています。
「食品ロスで困ってはいるけれど、何から始めればいいのか分からない」という事業者様には、まず気軽にご相談いただきたいと思っています。実際に現地へ伺い、ecoeatの仕組みをご説明したうえで、ロスの状況を見ながらそれぞれの事情に応じた具体的な取り組みをご提案させていただきます。
お得な買い物が、誰かの笑顔につながる場所

ecoeatを始めてからの内面の変化を教えてください。
一番強く感じているのは、「続けていくことの大切さ」です。本業のイベント業は、単発で人を楽しませる仕事ですが、食品ロスの削減や生活困窮者の支援は、継続してこそ意味がある取り組みだと、ecoeatを始めて実感するようになりました。
寄付した食品を届けに、子ども食堂を訪れることもあります。そこで、提供した食事を食べて笑顔になっている子どもたちの姿を見ると、「この活動をしていてよかった」と心から思いますし、「これからも続けていきたい」と自然と思えるんです。
私たちは、あくまで本業のかたわらでecoeatを運営しています。だからこそ、ecoeatで利益を出そうとは考えていません。得られた利益はすべて、寄付や支援に回すことで、食品に新たな価値をつけ、本当に必要としている人のもとに届けたいと考えています。
お客様に伝えたいことは何ですか?
ecoeatでの買い物を通して、気軽に、そして楽しく社会貢献に参加してもらえたら嬉しいです。「宝探し」のような感覚で店内を回っていただけるよう、新商品もどんどん増えていて、「行くたびに新しい商品に出会える」――そんなワクワクするお店になってきました。
あなたのお得な買い物が、誰かの支援や食品ロス削減につながっている。そんな前向きな循環を、楽しみながら体感してもらえたらと思っています。欲を言えば、新しい商品を見たときに「こんな商品も廃棄されているのか」と気づきを得るきっかけになったら、さらに嬉しいです。
個人で寄付や支援をするのはハードルが高いと感じる方も多いと思いますが、ecoeatでは、いつもの買い物をするだけで自然とその一歩を踏み出すことができます。
ぜひ気軽にお越しいただき、楽しんでいってください。
かたちを変えて、つながり続ける

「食品ロスを減らす未来」に向けて、今後挑戦したいことを教えてください。
今後は、ecoeatの店舗をもっと増やしていきたいと考えています。まずは東日本の全県への展開を目指して、最初のステップとして、新潟県内の三条・長岡・上越などへの出店を検討中です。
また、新潟は車社会ということもあり、「お店に行きたくても、車がなくて行けない」という声も少なくありません。そういった方々にも食品を届けられるように、出張ecoeatのような形も模索しています。本業で行っているイベントでの展開のほか、キッチンカーで集落を訪れるといった方法も視野に入れながら、新潟という地域ならではのニーズに合わせた支援の広げ方を、これからも探っていきたいと思っています。
●詳細情報
名称:ecoeat泰平橋店
住所:新潟県新潟市東区中興野1-15
HP:https://www.mottainai-shokuhin-center.org/store/taiheibashi/
Instagram:https://www.instagram.com/ecoeat_niigatataiheibashi/
finearダウンロードはこちら!
https://finear.jp/about/use/
finearの公式Instagramでも情報発信中!
https://www.instagram.com/finear_press/?hl=ja
取材にご協力いただきありがとうございました!
finearではこれからも、「つくり手(つなぎ手)の想いでつなぐ、新潟の未来」をテーマに、生産者の想いを発信していきます!
取材撮影 by BOOT